「弟と妹も、お腹を空かせてたのかい?」「うん……いつも一緒に森へ行って、木の実とか食べられる物を探してた」 ほぼ、サバイバルだな。 それでも、にっちもさっちもいかなくなって、アネモネだけが口減らしで売られてしまったのだろう。 出会った時はガリガリだったし、あんな状態じゃ力仕事だって無理なはずだ。「やれやれ」 アネモネの頭を撫なでてやる。この世界は、こんな感じなのが普通なんだろうな。「でも、アネ嬢。魔法が使えるようになったんだから、もう食うには困らないと思うぜ」「うん」「にゃ、あんな凄い魔法が使えるなら、冒険者からも引っ張りだこにゃ」「冒険なら、ケンイチと一緒にするから」「おいおい、俺はちょっと危ないのは勘弁だがなぁ」 別に、そんな危ない事をしなくても食うに困らない金はあるし。「そうですよ。そんな危ない事をしなくても、私が商売をして、ケンイチを食べさせてあげますから」「それは、それでちょっとなぁ。男として拙まずいんじゃないか?」「ははは、それじゃヒモだよな」 まぁ、ニャメナの言う通りだな。それも、ちょっと勘弁してもらいたい。「ケンイチと一緒に冒険に行くの!」「私と一緒に商売をするのが、平和的でケンイチには合っていますわ」「「ぐぬぬ……」」 アネモネとプリムラの間に、見えない火花が飛んでいるような。「あっ、そうか!」 突然、ニャメナが膝を叩いた。「なんだ? 何かあったのか」「アネ嬢が凄い魔法が使えるのって、嬢のオカン譲りなんじゃね?」「それも、そうだな……そう考えるのが妥当だろ。本当の母親に関する物って残っていないのか?」 彼女が黙って首を振る。まぁ、俺と出会った時にも何も持っていなかったからな。「でも、私の名前は、本当のお母さんが付けてくれたみたい」 だが、彼女の凄い魔法の力を見ると、母親は結構有名な魔導師だったのかもしれないな。「探せば、親戚やらも見つかるかもしれないが……」「ううん」 彼女がまた首を振る。全く、そういったものには興味がないようだ。「旦那――女は、目の前に好きな男がいれば、後は何もいらないんだよ」「どんだけ歳が離れていると思ってるんだよ。大体プリムラだって親娘ぐらいの歳の差なのに」