「もし、師匠の素質を引き継いだ子がいるなら、私が直接指導するつもりでした」 ミルトは笑顔で言った。 確かに魔導師の師としては、ミルトは最高の人物だろう。「ですが、寵愛値測定装置で、守護神が一柱と聞きまして……」「ああ、そうだな、俺の守護神は一柱だ」「急いでミルトにどういうことが考えられるか尋ねたのです」「ゼノビアから事情を聞いて測定装置のログを読み色々判明しました」 ミルトは、俺がアルティに意識が飛んだものはいないかと尋ねた話なども聞いたらしい。「総合的に判断して師匠の転生体。それも神の使徒となっての生まれ変わりと判断しました」 俺は確かに人神から神々の使徒と言われていた。とはいえ、一柱なのだが。「それに師匠が対戦相手に使った水球の魔法は昔見せてもらいましたし」「そうだったか?」「はい。お腹を下させるところまで一緒でした」 ミルトは楽しそうに笑う。「だから、私が師匠だと判断したのは勘とかじゃないんです!」 ゼノビアは力説する。「だが、いきなり抱きつくのはまずい。もし違ったらどうするんだ?」「私が師匠を見間違えるわけありません」「……どこからその自信が来るのかわからないが」 なぜか胸を張っているゼノビアの横で、ミルトはずっと笑顔だ。「ですが、師匠。もし私たちが気づかなかったらどうされたのです?」「ん? 俺しか知らない昔のエピソードとかを用意していた」「ほほう? どんなエピソードですか?」「ゼノビアが四歳の時に。お化けが怖いと――」「あっ! ああああああーーっ! 師匠、わかりましたから!」 慌てた様子でゼノビアが俺の口を手でふさいできた。 子供の時の話なのだから、恥ずかしがらなくてもいいと思う。 それも、もう百二十年以上前の話なのだし。 とりあえず、弟子二人に俺がエデルファスの転生体だということはわかってもらえたようだ。