「――えへ、えへへ」 桜は今、教室の自分の席でお兄ちゃんと撮ったプリクラを眺めてた。 このプリクラはお兄ちゃんと撮った、桜の宝物。 そこには普段とは違って目がきちんと見えて、服装も髪型もキマったお兄ちゃんと、猫耳メイドというらしい恰好をした桜が写ってる。 別にお兄ちゃんがカッコイイ事は知ってたし、普段見た目を気にした事は無いけど――やっぱり、桜のお兄ちゃんは凄くカッコイイと思った。 お兄ちゃんは桜の目・が良い人と判断をした人だった。 別に良い人と判断したからと言って、優しい人とは限らないよ? その人の事を考えて叱ってる人も、怖いけど良い人と言うのが桜の目の判断基準だもん。 でもお兄ちゃんは、性格も凄く優しい。 桜の事を凄く可愛がってくれるから、桜はお兄ちゃんの事が大好き。 そして――二度も桜が困ってるとこを助けてくれた人でもある。 ――だから、やっぱり大好きなの! 過去の憧れのお兄ちゃんだった人が、本当のお兄ちゃんになった時は凄く嬉しかった。 だから、凄くベッタリくっついてみた。 でも、最近はお姉ちゃんが家に帰ってからお兄ちゃんを独占しちゃってる。 確かに、学校から家に帰るまでは桜がとっちゃってるけど、桜は学年が違うせいでお兄ちゃんと少ししかいられないんだから、家でずっとお兄ちゃんをとるのはずるいと思う。 だけど……やっぱりお姉ちゃんも大好きだから、邪魔はしたくない……。 う~ん……どうしたらいいのかなぁ……? 三人仲良く一緒にゲームしても良いのに……。 ……でも、桜にはちょっとあのゲームをするのは無理だよね……。 お兄ちゃん達気づいてないのかな……? 音量下げててもイヤホン付けてないから、耳をすませば廊下にも聞こえてくるんだよね……。 二人で変なことしないといいけど……。 ……それにしても、猫耳メイドは恥ずかしかったよぉ~……。 桜は一度視線を両手で持ってるプリクラに向けて、そう思った。 でもでも、お兄ちゃんめちゃくちゃ喜んでくれてたから、やっぱりやってみてよかったと思った。 今度は何を着てあげたら喜ぶかな……? やっぱりアニメキャラのコスプレかなぁ?「――桃井さん、ちょっといいかな?」 桜がお兄ちゃんに喜んでもらう為に着る服を考えてると、クラスメイトの男の子が話しかけてきた。 ジー……。 桜はその男の子の顔を見る。 男の子は優しい笑顔を浮かべていた。「ちょっと話を――」 ――アウト……! 桜はそう判断すると、席を立って駆け出した。「あ――ちょっとまって! ……また逃げられた……」 桜が駆け出してすぐ、背中の方から男の子のそんな声が聞こえてきた。 桜は申し訳なく思いながらも、そのまま走る。