レイの口から出た言葉に、ランガと騎士は目と目で会話をしてやがて小さく頷く。「そうだね、それでお願いしよう。色々と負担を掛けるけど、よろしくお願いするよ」「気にするな。こっちとしてはそのくらいなら全く問題無い程の報酬を貰ったからな」 ミスリルで出来た懐中時計を手の平の中で弄び、ミスティリングに収納してからその場を去る。 そんなレイの姿を見送った後、ランガと騎士はとにかく今夜一晩はこの地で過ごせるように部下達に向かって指示を出し始めるのだった。「セト、ちょっと林の外まで飛んでくれるか?」「グルルゥ?」 レイの言葉に、セトはロープで縛られている血塗られた刃の方へと視線を向けて喉を鳴らす。 それが何を意味しているのかを理解したレイは、問題無いとセトの首を撫でながら口を開く。「ここの後片付けも大分終わってきたし、討伐隊の兵士にも大分余裕が出来た。逃げようとしてもあっさりと殺されるだけだろうから心配はいらないだろうな」 レイが縛られている血塗られた刃に向ける視線は、驚く程冷たい。 その理由の1つには、襲われた商隊の生き残りである女がどのような扱いをされていたのか。更にはゴブリンによって受けた仕打ちと、最終的にはそれが原因で息を引き取ったという報告を討伐隊の兵士がランガと騎士にしているのを聞いていたからというのも大きいだろう。「それに、もし逃げても……その場合、俺とお前ならいつでも見つけられるだろう? そうすれば、こいつらは生まれてきたことを後悔する程の経験をさせてやるよ」 その一言に込められた怒気と殺気を感じ取り、ロープで縛られている者達は殆ど反射的に動きを止める。 いや、それだけではない。近くで血塗られた刃の者達を見張っていた討伐隊の者達も身動きが出来なくなっていた。「……あ」 討伐隊の兵士の口から漏れ出た一言に、レイの身体から放たれる剣呑な気配が消え去る。「悪い、ちょっと感情的になりすぎた」「い、いや。大丈夫だ。こいつらがやってきたことを考えれば、そうなってもしょうがない」