顔を真っ赤にして驚おどろくフローラだったが、普ふ通つうに考えてそうやって運ぶ以外に方法はない。よくよく考えれば以前、アマンドでルシウスに攫さらわれかけて助けてもらった時もお姫様抱っこしてもらったから、驚くことではない。恥はずかしいことではあるが……。「では、いつまでもこの場にいるわけにもいかないので。まずはクリスティーナ様から」 どうぞ、とリオはクリスティーナに背中を向ける。「はい……。お背中をお借りします」 クリスティーナはほんのりと顔を赤くしながら、リオの背中におぶさった。(今日は大丈夫よね。朝、お風ふ呂ろをお借りしたから、臭においを気にする必要はないし) と、思うクリスティーナ。リオの背中に密着しても、三日前のようにあれこれ考えて気が気じゃない想おもいをすることはなかった。 ただ、緊きん張ちようは激しくしている。心臓の鼓こ動どうが伝わりはしないだろうか? そんな心配がこみ上げてくるほどだ。そして――、(よく考えたらこの姿勢だとアマカワ卿きようのお背中に私の胸が当たっているのよね……) 今着ているのは薄うすめのワンピースだから、三日前のドレスより直じかに感かん触しよくが伝わってしまっている。(だ、大丈夫よね? 私、そんなに大きくはないし……。私が背中でよかったわ。あの子、私より大きいし……) クリスティーナは顔を赤くして強張らせ、リオの背中に密着して抱きついたままぎこちなく硬直した。「……では、フローラ様も」「は、はい」「抱きかかえさせていただきます」 リオはそう言って、少しかがんでフローラの背中と膝ひざに手を添そえていともあっさりと抱き上あげた。「あう……。お、重くないでしょうか?」 フローラが赤面し、リオの腕うでの中で俯うつむきがちに訊きく。「ええ。お二人ともとても軽いですよ」「ならよかったです」 ホッとしたように息をつくフローラ。「…………」 対するクリスティーナはリオの背中にじっとくっついている。