「フィー様。……先ほどまでは、ここにいる無礼な住民たちを殲滅することで、あなた様の秘匿情報をも一緒に滅するつもりでしたが、……あなた様が彼らを生かすと決められたのなら、用心のために、敢えて『フィー様』と呼ばせていただきます」「ちょ、無礼……、殲滅って………」あまりにも物騒な話に思わず反論しかけたけれど、皆の前でこの話をするのはリスクが大きいと思い、話の続きは先に延ばそうと決める。……というか、カノープスとの会話って、先延ばしの話が多いわね。こんなに色々と非常識な騎士だったかしら?そう思いながらも話を先に進めるため、言いたいことを我慢してカノープス、もとい、カーティス団長に話を合わせることにする。「……分かりました。だったら、私も用心のために、『カーティス団長』と呼びますね」けれど、カーティス団長は私の言葉に異を唱えてきた。「団長は不要です。カーティスとお呼びください。それから、その丁寧な話し方も止めてください」「いやいや、一介の騎士として、そういう訳にはいかないんですよ!」思わず反論した後、私は小さくため息をついた。……もう、カーティス団長ったら。いちいち立ち止まるから、ちっとも話が進まないじゃないの!それに、そもそも常識が身についていないわよね。立場ってものを全く理解していないわ!そう呆れた気持ちでじとりとカーティス団長を睨みつけると、団長は静かに私の視線を受け止め、冷静な表情で頷いた。「でしたら、私は団長職を辞して、晴れてカーティスとお呼びしてもらい……」「カーティス! はい、カーティス、何でしょう!?」あまりにも極端な解決方法を提示され、私は思わずカーティス団長の言葉を遮った。……やっ、やる! カーティス団長ならきっと、本当に実行するわ!敬称なしで名前を呼んだ私を至極当然といった風に見つめると、カーティス団長は満足したかのように頷いた。「大変結構です。……私が申し上げたかったのは、優先順位にお間違えはないですかということです。あなた様がこれからなされようとされていることと、現在騎士をなされている理由とは、整合性が取れていますか?」「……と、取れていません」私は少し考えた後、カーティス団長の言葉の正しさと冷静さに敗北を認めた。……そ、そうだった。私が聖女として生まれ変わったことが魔王の右腕にばれたら、殺されるんだった。