「…………っ……!」 あんこが去って、暫し。 レンコは、冷や汗と体の震えが止まらなかった。 机一つ分の距離で対峙する間、嫌と言うほどに感じていたのである――“格の違い”を。 面会室へと足を踏み入れたその瞬間から、常に、気配もなく、音もなく、防ぐ間もなく、一瞬で、一方的に、至極残酷に、いつ捻り殺されてもおかしくない状況だった。彼女には、その身の毛もよだつ事実を、感じ取れるほどの実力があったのだ。「くそっ! 何なのさ、アレは……!」 三冠王セカンドが面会に寄越した女。 異常にも限度がある……と、レンコは天を仰ぐ。 単純に言って、アレは、バケモノだった。 【体術】スキルの殆どを高段まで上げている彼女が、十人と束になったって敵わないだろう、正真正銘のバケモノだったのだ。「……とりあえず、報告しないとね」 誰に。 それが明らかとなるのは、誰もが寝静まった、夜――。