「ケンイチ――何があっても、私や父は貴方を責める事はありません」 マロウさん父娘はそうかもしれないが――マロウ商会を巻き込めば、末端家族を含め千人近くが露頭に迷う。 勿論、その家族からも恨まれる事になるだろうなぁ……う~む。 アネモネも頷いているのだが、獣人達の様子がちょっとおかしい。「なぁに、この場の収拾は、ある条件を飲めば簡単じゃ」「その条件とは?」 そう聞いた所で、虎縞の毛皮が重機を這い上がり、俺に抱きついてきた。「ニャメナか!? どうした」「ふうううう!」 涎を垂らし、血走った目は完全に何かがおかしい。「おい、どうした!?」 だが、俺の言葉を無視して、ニャメナが俺の首元に噛み付いた。「あいたたたた! ちょっと、待て待て!」「ケンイチ! この臭いは、あの日だにゃ!」 コ○ツさんの下から、ミャレーの声がする。あれって、あれか? 獣人が年に1回発情すると言う?「ふがふがふが!」 ニャメナは、俺の首に齧りついたまま、離れてくれない。「あいてて! ミャレー、こりゃどうすればいいんだ!?」「ケンイチ! 酒だにゃ! こういう時は、酒を浴びるほど飲ませるにゃ!」 慌てて、シャングリ・ラで酒を検索する。彼女のお気に入りだった、ブランデーでいいだろう。 購入ボタンを押すと、ブランデーが2本落ちてきた。「ほら! ニャメナ! お前の好きな酒だぞ!」 酒を見たニャメナは、俺の首元から離れると、豪快にブランデーをラッパ飲みし始めた。 そして彼女は空になった瓶を投げ捨て、カタピラの上でふらふらになると、そのまま重機の下へ落下。 それをミャレーが受け止めた。45度ぐらいあるブランデーを丸ごと1本ラッパ飲みすりゃ、そりゃひっくり返る。「もう、世話の焼けるトラ公だにゃ」「大丈夫か?」「多分、大丈夫にゃ」 ふう、なんでこんな時に――。 重機の下で呆然としている王女に声を掛ける。「え~と、リリス様。なんでございましたっけ?」 間が悪く――口上を中断されてしまい、やる気を削がれたような王女だったが、気を取り直したようだ。「え~い!! 魔導師ケンイチよ、我が物になるがよい!」「お断りいたします」 俺の即断に王女はあっけに取られ、しゃがみこんだ。また貴族や騎士達がどよめく。「即断かえ?! もうちと、考えるとか迷うとか色々とあるじゃろう?!」 どうやら王女は、俺が彼女の申し出を断ったのが、意外だったらしい。「王族の玩具になるのは、まっぴらごめんです」「むう……やはり、一筋縄ではいかぬようじゃな――それでは妾の女子としての些細な願いを一つだけ聞くがよい!」「願い?」 俺の訝しげな顔色を見た、王女が続ける。