周囲の騎士達から次々と声が上がる中、養父様から「武力行使を許可する」というオルドナンツが飛んできた。「フェルディナンド様、飛び立ったオルドナンツの数は七羽。そのうちの二つが主戦場へ向かいました。それから、アウブ・エーレンフェストから許可が出ました」 わたしがオルドナンツをフェルディナンドに飛ばす。白い鳥が高速で飛んでいって数秒後、ドォンという爆発音がして木々がなぎ倒された。「……許可が出た途端、派手になりましたね」「喜々として攻撃を開始したダンケルフェルガーの騎士達の姿が見えるようです」 ハンネローレが少し申し訳なさそうに「ダンケルフェルガーの騎士達がエーレンフェストの土地を荒らしてしまいそうです」と言った。 ……仕方がないけど、もうちょっとお手柔らかにって、言いたくなるね。 圧倒的な数の有利に任せて小隊を一つ潰したフェルディナンドが、自分達に合流するようにオルドナンツを飛ばしてきた。上空に見張りを数名残し、わたしとハンネローレは合流するために下へ向かって下りていく。「わっ!?」 ダンケルフェルガーの騎士達の半分ほどがずわわわわっと森から飛び出してきた。ものすごい勢いで次の小隊に向かって襲いかかっていく。「ローゼマイン様、わたくし達はフェルディナンド様のところへ合流いたしましょう」 ハンネローレはダンケルフェルガーの騎士達をちらりと見ながらそう言った。わたしはハンネローレに言われた通り、山吹色、藤色、青のマントが集まっているところへ合流する。捕らえられた貴族達が三十人くらい転がっているのをフェルディナンド達が取り囲んでいるのが見えた。「黒の武器と小聖杯が使われていた」 フェルディナンドはわたしに向かって小聖杯を振ってみせた。どうやらギーベが持っていた物らしい。「旧ベルケシュトックのギーベ達はゲオルギーネが礎を手に入れた暁には新しいエーレンフェストのギーベになる予定だったそうだ」 捕らえられて転がされている小隊の貴族達がわたし達を睨み上げてきた。その視線からわたしを守るようにコルネリウス兄様とアンゲリカが場所を移動する。「君も知っている通り、小聖杯は土地を満たすための魔力を溜めておく魔術具だ。黒の武器を使って小聖杯にエーレンフェストの土地の魔力を溜めれば、ゲオルギーネが礎を奪う時に少し楽になる」 土地に満たされている魔力を奪うのは、礎の魔力を減らすのと同じだ。また、小聖杯に満たされている魔力を使えば再び土地を満たすことができる。ゲオルギーネが礎を得たら、小聖杯の魔力はエーレンフェストの土地に戻される予定だったそうだ。そうして彼等は満たされた土地のギーベや貴族になって、自分の土地の民を移動させる予定だったらしい。