それに……。 私は、膝においていた拳を強く握りなおした。「それに、もしかしたら、私の魔法で何事もなかったようにすることが……できるかもしれない。殿下は、私の魔法を見て『隷属魔法』っていう単語を使ったの。多分、その魔法さえ使えれば……」 ヘンリーを意のままにあやつれるかもしれない、という言葉は口に出せなかった。 『隷属』魔法というのが言葉の通りのものなら、私はこの状況を何事もなかったかのように丸く収められるかもしれないのだ。 でもそれは、あまりにも非人道的で、身勝手なもので……。 我ながらひどいことをしようとしていると思う。 考えるだけでおぞましくて吐きそうだった。 でも、私はこれからそれに頼ることになる。 いや、もしかしたら今までだって……。 私にそのつもりはなくても、隷属魔法を使っていたとしたら? だって、ゲスリーは確かに、そう言った。 そう思ったらあまりの恐ろしさに体が震えた