「嫌よ」眠るシャスラハールの顔を豊乳へ抱き寄せながら、クスタンビアが叫んだ。「こ、こんな……ハルビヤニ様の味がして、匂いがして、どことなく似ているなんて!」その叫びに対し、「でしょう。ハルビヤニは消えてるけど、しっかりソイツと混ざってるのよ。そこで取引」ラグラジルは指を一本立て、「アンタがワタシ達の役に立ってくれたなら、後でソイツをこっそり貸してあげるわ。ひと月くらいね」邪悪に笑った。「ソイツは操り易いわよぉ? ハルビヤニみたいに無茶を言わないし、遠慮しがちな控えめだし。もしかしたら、アンタ好みの『ハルビヤニ』に育てられるかも知れないわねぇ?」その言葉を聞いた瞬間、「ハンッ! 取引ねぇ……乗ってあげたいところだけど……残念ね。アンタの管理下に居る『ハルビヤニ』様なんていらない。ワタシが全部育ててみせる!」シャスラハールの体を抱え上げ、クスタンビアが叫んだ。取引を破り、奪い去る。親鬼の本性を露わにしたのだ。しかし、「ふん……そんなのお見通しなのよね? ラクシェ!」ラグラジルは不敵に笑い、妹の名を呼んだ。「お姉ちゃんなにー? メイド様からお夜食貰ってたとこだったのにー……ってクスタンビアッ?」窓の外に、力天使ラクシェが姿を現した。「な、なんでラクシェが……」動揺するクスタンビアに、「時間稼ぎは充分出来たからね。さて、クスタンビア。取引を続けましょうか」異空間接続の魔法を秘かに展開させていた手を止め、魔天使は昏い笑みを向けた。