ただ、気になることもある。 今日一日過ごしているあいだ、ほんの少しだけ寂しそうな感情も彼女から伝わっている。それはか細い泣き声に似ており、まるで迷子になり置いていかれる子供のようだ。 ――大丈夫だよ。 自分の腕をさすり、とても単純な言葉を彼女へ伝えた。 宿主として憑依されているせいか……いや、たぶん僕だから分かるのかもしれない。「なぜなら、僕もまた同じような存在だからね」 誰にも聞こえないくらいの小さな声で、そう僕は呟く。 すると鈴の音のように驚きの感情が、身体の奥から伝わってくる。 彼女は第二階層へ縛られ続け、ずっと一人で過ごしてきた。だからこそいま恐れるのはひとつきり――また孤独に戻ってしまうのでは、という不安かもしれない。不老不死という存在ならば尚更だ。 だから僕にも少しだけ分かる。長いあいだ孤独のなかに居たせいで、今の生活が無くなることを恐れる事もあるからね。 とくんと彼女の心音はひとつ揺れ、ゆっくり落ち着いてゆくのを僕は感じた。 けれど、今はそんな言葉しか伝えられないのは残念だ。いつか彼女が心から安心できるように手助けをしたいと思う。 それにはまず、今をゆっくりと楽しむことだね。 そう考え、最後の草だんごへもぐりと齧りつく。餡子のついたお団子は、にゅうと伸びるほど柔らかかった。