いちぐらむぅ?「そりゃ、薄紙1枚……いや、体に固定するアイテムを考えると、それも苦しいか」そう言うと、三好は不敵な笑みを浮かべて、ちっちっちっちと右手の人差し指を振っている。「先輩。今は2018年ですよ?」そういって、小さなチップのような物を取り出した。「マイクロSDカード?」「マイクロSDカードの重さは、大体0.4gなんです」え、マジで? そんなに軽いの?「いや、だけど身につける器具が問題だろ? クリップで挟むにしても、0.5g級のクリップなんてあるのか?」「ありませんでした」「うーん。さっきみたいにメンディングテープとかで、鼻背に張りつけるか?」それなら1gを切るかもしれない。「それだと外れたときが怖いですよね」「まあな」身につけたものは入れ替わるだけだろうが、はずれて落ちたらいったい何処へ行くのか?認知不可能な空間を永遠に漂ったりしてそうだ。「それでね、先輩。釣りに使われる1号のラインって、大体200デニールなんだそうです」なんだいきなり?「デニールってストッキングとかの?」「です。因みにこれが40デニール」多少透け感が残ってますよね、と言って、自分のタイツをつまんで持ち上げるとぱちんと放した。ストッキングはメーカーにもよるが、大体25デニール以下なのだそうだ。「デニールって、糸の太さの単位なんですけど、同じ直径の糸が同じデニールになるとは限りません」「意味がわからん。なんでそれで糸の太さが表せるんだ?」1m長さが、物質によって変わったりしたら単位として成立しないだろう??「デニールは、kg/mの900万分の1で定義されてるんですよ」「糸1mの重さだったのか」「糸の直径を測る手段が無かった時代だったんでしょうね。まあそういうわけなので、200デニールの糸1mは、0.02gちょいだってことです」そうして三好が、透明な紐のような何かを取り出した。それはラインで編んだ小さな籠付きの首輪だった。「それでポシェットを作ってみました! 重さは大体0.3gです!」糸よりも籠を組み立てる際に利用した接着剤の方が重いかも、だそうだ。それにマイクロSDを詰めた三好は、早速2匹に入れ替わりを支持していた。超軽量ポシェットを装着したアイスレムは、見事にそれを装着したままカヴァスと入れ替わった。「凄いじゃん!」「あとは、ポシェットと他の装着物がふれないよう注意するくらいですかね。触れてると失敗します」そうすると、ひとつの物体とみなされるらしかった。その時、玄関の呼び鈴が鳴った。「おはようございます」ロックを外すと、何かの書類を小脇に抱えた鳴瀬さんが、ドアを開けて入ってきた。「おはようございます。早いですね」「ええ、丁度土地の件が暫定ですが、まとまったのでご報告に」鳴瀬さんは以前話していた、2層の土地利用に関する賃貸資料を携えて来たようだった。