ややこしくなってきたぞぉ。「先の一つと、後の二つは別で考えなくてはならない。ゆえに、こいつに対応しようとした場合は、組み合わせが増えるから……うーん、というか、対応はほぼ不可能に近い」 言いながら、《相乗》をキャンセルする。 そして、もう一度。今度は、三つの【魔術】を同時に詠唱する。「こうやって同時に詠唱できる。魔術陣は足元に三つ全て出るが、一瞬で見抜いて1+2の属性への対応を準備するのは……非常に難しい」 できなくはないがな。「分かったか? こうやって運の要素を減らせば、戦術の幅が大きく広がるんだ」「 」 反応がない。ムラッティは口をぽかんと開けて、放心していた。 いやあ、これだけ良いリアクションしてくれると、説明していて楽しいなぁ。「よし、これが最後。“溜撃”だな……覚えておけ。魔術で最も火力を出す方法だ」 俺は折角なので《雷属性・参ノ型》を準備して、《溜撃》を発動する。 これは溜めれば溜めるだけ火力の上がる倍率攻撃スキル。魔魔術の場合、INT+INTの純火力で、《溜撃》九段なら、溜め時間最大10秒、その倍率は――800%。即ち。「10秒待てば、参ノ型を通常の16倍の威力で撃てる。これでクリティカルが出たら……48倍だ」 ……溜める。溜める。溜める。 ぐわんぐわんと俺の周囲の空間が歪曲して、悍ましくも凄まじい威力が参ノ型へとギュンギュン凝縮されていく感覚。 足元の魔術陣からバチンバチンとツタのように雷が漏れ出しては地面でのたうち回っている。「っは、はわぁあ! 何ぞそれ!? 何ぞそれぇ!?」 ムラッティは興奮やら好奇心やら恐怖やら色とりどりの感情を顔に浮かべつつ、結局、最終的に好奇心に落ち着いて、汗と涙と涎と鼻水にまみれた何とも嬉しそうな表情で聞いてきた。「家に来た時に、教えてやる」 最後は、パフォーマンスの時間だ。 魅せてやる。そして更新してやる。叡将戦における【魔術】の最大ダメージ記録を。「――ッ」 《雷属性・参ノ型》のフルチャージ《溜撃》が、ムラッティへと飛んでいく。 ムラッティは満面の笑みで両手を広げた。感無量とでも言いたげな表情。マジかよ。頭おかしいなこいつ。「ぐおっ」 着弾。同時に、予想以上の衝撃が闘技場全体を襲った。 俺は体勢を低くしながら、表示されたダメージを確認する。 《クリティカル》は、出ていた。 ダメージは――931514。 ……恐らく。ここにいる観客や出場者の全員が、見たことも聞いたこともない数字だろう。 これで、大いに活躍、そして、良い挑発ができたんじゃないかなと思う。 一閃座と叡将で、“二冠”にもなった。 アルファというエルフの弟子も新たにできそうだし、ムラッティという魔術オタクを通じて問題ない程度にスキル習得条件の開示もできそうだ。 こいつぁ、夏季タイトル戦に期待が高まるなぁ……!「――し、勝者、セカンド・ファーステスト!」