グローブもはめあった二人は祐太の部屋の少しだけ空いたスペースで向かい合った。 七海が「ボックス!」と言って、二人はグローブタッチをしてファイティングポーズをとり、狭い空間ではあるがステップを踏んで距離を保った先に手を出したのは七海だった。ボクシング部らしい撓るようなジャブを連続で放ち、祐太のグローブに当たってバスッ!バスッ!と音を立てる。 祐太も七海の様子を見ながらジャブを放ち、七海の出方を覗っている。 七海がサッと屈みながら踏み込み、左ボディー・右ストレートとパンチを放つが祐太は上手くブロックした。 七海「お兄ちゃん、やるじゃん!」 七海は左ジャブ、そして大振りの右ストレートを放ったと見せかけてパンチの勢いのまま身体を左にひねり、左足に体重を乗せて身体を右上に反らしながら左のボディーアッパーを祐太の右脇腹に突き刺した。 祐太「オウェッ!」 祐太が苦しそうに両腕を下げた瞬間、七海の体重を乗せた右ストレートが祐太の顔面を打ち抜いた。ブシャッ!という音がして唾液が飛び散り、祐太がフラフラっとよろめいた。