でも、中身はともかくとして、イケメソ高身長のスポーツマンという、外面だけは高スペックの池谷とつきあってる事実のほうは畏れ多くないのか。 というより、俺と池谷、二人並んで『どっちとつきあいたい?』ってアンケートをとったら、校内二周くらいしても俺には一票も入らない気がする。かなしい。 泣いていいですか? 白木さんの胸の中で。 ………… 自粛って難しいよね。本能に訴えかけることは特に。「お、おまけにですね」「まだ何かあるの白木さん? 自虐ネタはノーサンキューよ」 自分を棚に上げる俺。カコワルイ。だが白木さんはやはり聖母だった。「あの、わたしが浮気されてる時に感じた、怒りとか悲しみとか、死にたくなるような感情。それを吉岡さんに感じさせるのは、少しかわいそうかな……な、なんて」「……」「だ、だって、別れたとしても、吉岡さんは緑川くんにとっては大事な幼なじみに変わりないわけで……」 ──ったく。 どこまで優しいんだ、白木さんは。思わず苦笑いしちゃうじゃねえか。 でもさ、こんなに優しい白木さんだからこそ、俺だって何かしてやりたくなるんだよな。「そっか。でも、もし池谷が白木さんの幼なじみだったとしても、俺は池谷に復讐したいよ」「……えっ?」「だって俺は、そんな池谷に裏切られて、これ以上ないくらいに悔しくて悲しい涙を流した白木さんを、一番近くで見ちゃってるからね」 白木さんの優しさは否定しない。 だけど、そんな優しい白木さんをただただ泣かせるだけの池谷は許せない。 それだけだ。「…………」 白木さんが俺の言葉を受けてから、真剣な、とても真剣な表情で何かを思案している。「白木さん? やっぱ、だめ?」「……そう、ですね。じゃ、じゃあ、わたしでよければ……緑川くんに、協力、したいかな、なんて……」「白木さん……」 これが感極まる、というやつか。大相撲で優勝した力士の気持ちがよくわかるわ。「あああ迷惑でしたか迷惑ですよねすみませんわたしみたいなミジンコごときが調子に乗っちゃってごめんなさいごめんなさい」 ペコペコを繰り返す白木さん。自分にそんなに自信がないのも本当に考えモノだ。仕方なしに、俺は白木さんの手をガシッと握る。「……ふぇっ?」「ありがとう。とりあえずはつきあってるふりでいい。よろしくお願いしたい」「あ、ああああ、ああああのあのあの」 手を掴まれて振りほどけない白木さんは、なぜか耳まで赤木さんに変化して。「……フ、フツツカモノデスガ、コンゴトモナニトゾヨロシクオネガイイタシマス……」 棒読みでうつむきながらOKしてくれた。一昔前の人工音声みたいだぞ。 脇ではナポリたんがニヤニヤしている。「まーったく、初々しいねえこのバカップルは」「いや、正式につきあうわけじゃないからな?」「それはボクにはどうでもいいよ。じゃあ祐介たちの話がまとまったところで、ボクは後始末その壱いちを始めるとするか」 俺の否定など右から左へ流し、突然ナポリたんはおもむろにスマホで通話をし始め、俺たちから離れていく。 どこへ行くのだろうなどと思ってナポリたんを見ていたら、シャツの裾を引っ張られた。引っ張ってきた相手はもちろん赤くなった白木さん、略して赤木さんである。「あ、あのですね、緑川くん……今日の夕方から、時間ありますか?」「……ん?」「も、もしよければ、監視が終わってから、少しでいいんです。わたしの家で、今後の打ち合わせ、など……いかがでしょうか……」「え゛」 いきなりイベントがやってきました。俺、もちろんお約束のフリーズ。 今までの人生振り返ってみると。 俺さあ、佳世とナポリたん以外の同年代の女子の家って、行ったことないんですけど。