なんでこいつ、こんな機嫌が悪いんだよ……。 え、俺何もしてないよな……? 今日は俺が朝早く出たから、まず顔を合わせてないし……。「あらあら、いくら桜の為に海斗君がカッコ良くなってるからって、妹にヤキモチをやくのは駄目よ?」 そう言って、香苗さんがニコニコと桃井の頭を撫でる。「別にやいてないし……」 そういう桃井は香苗さんの手から逃れ、俺の方をまたジト目で睨んできた。 ……香苗さん、流石にそれは見当違いも甚はなはだしいですよ……。 桃井の機嫌がさらに悪くなってるじゃないですか……。「えへへ、お兄ちゃん、お待たせ……!」 俺達がこんな不毛な会話をしていると、凄くおめかしをした可愛い桜ちゃんが出てきた。 淡いピンクをモチーフにしたフリフリがついているワンピースと、髪に結びつけた白いリボンが良く似合っている。 ただこれは、ゴスロリ服までとは言わないが子供っぽい服だった。 まぁだから、桜ちゃんに似合っているんだが……。 というか、桜ちゃんなら普通にゴスロリ服でも着こなしそうだな……。 「ど、どうかな……?」 俺が桜ちゃんに見惚れていると、桜ちゃんが恥ずかしそうにワンピースの裾を持ちながら聞いてきた。 か……かわいすぎる……!「うん、凄く似合ってて可愛いよ桜ちゃん!」「ほ、本当!?」 俺が可愛いと言うと、桜ちゃんは凄く嬉しそうな表情で聞き返してきたため、俺はそれに笑顔で頷く。 ワンピースは胸が大きい人が着ると太って見えてしまう為似合いづらいと聞いていたが、今の桜ちゃんはただただ可愛い。「お兄ちゃんも凄くカッコイイよ! 昔のお兄ちゃんが更にカッコ良くなったって感じだね!」「ハハ、ありがとう。桜ちゃんも本当に可愛いよ」 俺は笑顔でそう言ってくれた桜ちゃんに、誉め言葉を返した。「よかったわね、桜」「うん! えへへ……」 俺達の会話を笑顔で見守っていた香苗さんが桜ちゃんに声を掛け、桜ちゃんは嬉しそうに頬に両手をあて、頬を赤く染めながら笑っていた。 ただ、俺はそれよりも気になっているものがある……。 先ほどから桃井が、光を失った目で俺の事を睨んでいるのだ……。 ……こ、こわい……。 久しぶりに桃井のこんな顔を見た……。 そんなに桜ちゃんを俺にとられるのが嫌なのか……? まぁ確かに、桃井の奴凄く桜ちゃんの事可愛がってるしな……。 ………………俺、桃井に刺されたりしないよな…………? 俺は昨日の華恋さんとの会話を思い出し、身の危険に震え上がるのだった――。