……とかなんとか考えていた時期があたしにもありましたとさ! なんだよこれ!? 使用人用の豪邸!? はァ!? 使用人用なのに豪邸っておま、聞いたことないんだけど! しかもただのメイドにっつーか奴隷に一人一部屋とか意味分かんねーよ!! すんげー豪華な部屋だし! っていうかなにどんだけ土地持ってんの? あたしらこんな場所にいていいの? なんか逆に申し訳ないわ! それに教育のレベル高すぎな? なんか勘違いしてね? 上質な教育って誰でもそう簡単に受けられるもんじゃねーからな? こんなん続けられたらあたし上級貴族んとこにいるみてーな一流のメイドになっちまうぞ? いいのか? なるぞ? あとさぁ食事が美味すぎるんだけど? 毎日3食きっちり出るうえにこんなに美味かったらしまいにゃ太るぞ。 いや嘘ついた。太ることはないわ。あの完全無欠メイド長の鬼しごきがヤバイからな。3日に1回ペースで地獄見せられちゃあ太る暇なんてねーわ。まっ、ここに来る前と比べたら天国みたいなもんだけどよ。 最近はたまーに遠目で見かけるご主人様のお姿があたしの癒しになってるわ。まだお側にお仕えすんのは許されてねぇけど、いずれはご奉仕して差し上げんのがあたしの差し当たっての目標だなー。なんつって。 いやー、あのダーク鬼軍曹が怖ぇこと以外は文句なしだわマジで。ガチで恵まれてる。ハンパなく自覚した。させられた。脳ミソに刻み込まれたわ。 つか冷静に考えたらあたしら万能メイド隊10人全員まだご主人様に近付けてねぇんだよ。おかしいよなぁ? これさぁひょっとすっとあの鬼軍曹が――「エル。手が止まっていますが?」「も、申し訳ございません」 怒られたー! こいつエスパーかよ!「…………」 エスのやつこっち見て笑ってやがる。いいよなぁお前はメイドの才能あって。姉ちゃんはダメだわ才能ないわ。もともと柄じゃねえしな……。「いいですか? 今ここにいる10人は精鋭『万能メイド部隊』の名に恥じないレベルに達しなければなりません。あなたたちには教養が、精神が、経験が足りていない。私が一つずつ教えましょう。ですから呼吸するように学びなさい。そしていずれはあなたたちが部下に教える立場となりなさい」 なんつってしょげてると、ユカリ様は見計らったように激励してくださるんだよなぁ。 この人は鬼のように厳しいけど、何だかんだいってすっげー良い人なんだよ。 まあ……つまり、何が言いたいかというとだ。 あたし一生ここで働きたい。