白銀に憧れ「そうだなあ……ウラシマとマムシ、どうだ?」 俺は道場内を見渡して、二人を指名する。 樹老流家元の爺さんウラシマは険しい表情で、天南流家元のマムシは「イェイ」とノリノリで一歩前に出た。よかった、どうやら二人とも拒否はしないようだ。「よし、じゃあ二人とも同時にかかれ。念のため木刀使っとけば、大事には至らないだろ」 二人に木刀を渡しつつそう伝える。直後、道場内の空気がピリリと緊張したように感じた。「……待て。儂とマムシ、同時にと申したか? ミロク様は、それでよろしいのか?」「チッチッチ、それは実にナンセンスな疑問ですよウラシマ先生。先程のお二人のバトル、ご覧にならなかったのですか?」「なんだと? マムシ貴様、いつから儂に対して左様な口を利けるようになった」「これは失礼。しかし事実は事実。ミーと先生が協力し合わなければ、一分と持たないでしょう」「儂を愚弄するか!」 二人は犬猿の仲のようだ。 しかし、マムシは現実をよく認識しているように見えるが、ウラシマは全くもってわかっていないらしい。こりゃ、数秒が関の山だろうな。「アカネコ、マサムネ、アザミ。準備しておけ。次は一分と経たずにお前らだ」「何を申して……まさか、三対一か?」「ボク、あんまり自信ないなあ」「え、わ、私も? えぇ……?」 二対一の後、三対一。デモンストレーションとしては、これ以上ないだろう。 これで少しでも、島の外に出ようという気分になってくれたらいいのだが。 さて、どうなるか。「互いに礼」 ウラシマとマムシをミロクと対峙させ、号令する。 礼の後、二人は少々の距離を取り、腰を落として構えた。対するミロクは、背筋を伸ばし直立したまま瞑目している。「――始め」 さあ、試合開始だ。