元が黒髪のせいか浴衣が殊更似合い、白い首筋からは匂い立つような色気を感じさせる。ただ座っているだけでも、きっと道行く者達を魅了してしまうだろう。 だが、たぷんと音のしそうなほど口内を涎で溢れさせ、配膳の様子を熱い瞳で見つめているのは如何なものだろう。くつくつと煮え立つ鍋と、たっぷり溢れ出てくる美味しそうな香りに瞳をうっとりと細めてさえいる。 ぐうと力を溜め、それから彼女は両手を大きく開いてみせた。「これじゃな、これ! わしらの第二階層に必要な物はまさにこれじゃ! 立派な屋敷であろうとも、そこには魅力ある中身が詰まっておらねばならぬ。豪華な食事があってこそ、館主としての格がにじみでるのじゃ!」