「……はい。そうですね。嬉しいです。もちろん謝あやまらなければならないこともたくさんありますが、ハルト様がリオ様で、こうしてお話をすることができて、それだけでなんと言いますか」 アマンドでルシウスの魔ま手しゆから助けてもらった時にもリオという名前が出てきて、ハルトがリオなのではないかと本人に問いかけたが、あの時は拒きよ絶ぜつするようにはぐらかされてしまった。しかし、今回は違う。上う手まく説明はできないが、フローラはそのことが嬉しくて仕方がなかった。「そう」 クリスティーナはなんとなくその理由を察したのか、柔やわらかく微笑ほほえむ。「ハルト様のお家うちでお風呂に入るなんて、思ったこともありませんでした」「そうね、私もよ。特に王立学院に通っていた頃ころでは想像もできなかったでしょうね」「王立学院。懐なつかしいですね……。そういえばお姉様、スラム街ではハルト様に平手打ちをしたって……」 昔の話になって不意に思い出したのか、フローラが話を掘り返した。「うっ。そのことは……、いいえ、そのことも、申し開きの余地もないわ」 クリスティーナはがっくりと項うな垂だれる。「お姉様もハルト様とスラム街でお会いしていたんですよね」「ええ。あの時のことはよく覚えている。生まれて初めて訪おとずれたスラム街で、他にも彼に色々と失礼な態度を取ってしまったと思う。というより、一方的に怒おこってとても失礼なことも言ってしまったと思う」 クリスティーナが額を押さえ、罪悪感を色濃く滲ませた溜ため息いきをつく。「その、例えばどのようなことを?」 フローラが好こう奇き心しんを覗のぞかせて尋ねる。