へぇ、そういう事になってるのか。 俺はレオンをゆっくりと抱き渡し、ハドルは抱きながら皺の多い人差し指をレオンのもちもちした頬に置いた。 レオンはその指を小さな両手で掴み、ハドルの目を見ていた。 二人共、この時間が長く続かない事を知っているかのように。 ほんのひと時の親子の対面。目に涙を浮かべないところを見ると、その宿命の重さは計り知れないな。「感謝する」「されたいと思ってやってる訳じゃないのでご安心ください」 笑みとは言えないまでも、少しだけ表情を柔らかくしたハドルは、俺にレオンを抱き渡した。「使い魔杯に出場するそうだな」「えぇ、私の使い魔が出場する予定です」「楽しみにしておこう」「では私は不安にしておきます」「……ふっ、面白い男だったとアダムスに伝えておく」 優勝した使い魔とその主は聖帝に言葉を掛けてもらえるのだ。実にいらない。 なんて栄誉! みたいに思えず、ポチが粗相をする未来しか見えない。 勿論、優勝にはあの赤帝牛を使い魔とするリーリアに勝たなくちゃいけないんだけどな。 帰り道、ハチヘイルはあちらの護衛、という事で付き添いはいなかった。 …………そういえば、互いに自己紹介をしなかったな? 俺も鑑定眼鏡を使わなかったし、不思議と相手が聖帝だと自然に理解できた。 ハドルがどう思ったかはわからないが、しかし…………うーむ、おそるべし聖帝。