「敵は二人。路地進行中の女と、屋根の上の男です。どうぞ」「人質、手首の腫れあり、体の震えあり。どうぞ」「男に気配を察知されました。一時引きます。どうぞ」「了解。路地に降り合流、援護に付け」「了解」 アロマを連れて移動する合羽の女、その後を追う影が二人。 真っ黒な服に身を包んだ、二人組のメイドである。 メイドたちはチーム限定通信で連絡を取り合いながら、路地を行くアロマたちを追跡していた。 敵は、合羽の女と、合羽の男の二人。人質は、アロマ一人。 わけもない仕事――最初はそう思っていたメイドの二人だが、突如として事情が変わった。 屋根の上にいる、合羽の男。これが、かなりの強者だったのだ。「……何か違和感があります。合羽男の狙いがわかりません」「合羽女にぴたりと合わせて移動しているあたり、見張り役か、それとも……駄目ですね、視界が悪すぎます」 メイドの二人は合流し、追跡を続行する。 そこで、後ろからの気配を感じ取った。「後方にファンクラブ発見、接近中」「了解。速やかに接触し事情の説め――」「? どうかしまし……あぁ」 メイドたちの後方から、アロマを追いかけてきたファンクラブの生徒たちが接近してくる。 敵は想像以上に危険なため、以後はファーステストで対応する旨を伝えて、退避させようと、メイドはそう考えていた。 しかし、ファンクラブの更に後方から追跡していたある男の存在を確認し、メイドは一瞬にしてがらりとプランを変える。「作戦変更。屋根に上がり合羽男の警戒」「了解。これは面白くなりそうですね」「同意します……!」 屋根に上がりながら、彼女たちは思う。 明日は、天網座戦。この雨で、どうかお体を冷やしてしまうことのないように――と。