「他のヤツはどうか知らねぇが……どーも俺は、そう簡単に壊れるようにはできてないらしい」 俺は多分すでに自分の思う”最悪”を通り過ぎている。 きっと俺にとって、あれ以上の”最悪”はない。「…………」 女神に中指を突き立てたあの時。 のちの廃棄遺跡。 それらを経て、俺はあの頃”トーカ”を取り戻していった。 時間と共に。 作り上げた”普通”が自分の中から消えていくのがわかった。 もし”普通”のままだったら、この世界で早々に壊れていたのかもしれない。「ですがそれは、もしかするとトーカ殿がそう思い込んでいるだけで――」「セラス」 右手を上げる。 セラスの滑らかな頬に、手を添える。 彼女は身じろぎ一つせず、視線も逸らさなかった。「はい」「どうしても俺のことが心配なら、そうならないよう――」