「それで、何処に行きたい?」 俺は青山さんと影山さん(名前はさっき知った)という桃井のクラスメイトと別れてすぐ、桃井にそう尋ねた。 今日は桃井の誕生日の為、桃井の好きなようにさせるつもりだ。 ちなみに、未だ桃井に『誕生日おめでとう』を言っていない。 まぁ、それにもちょっとした訳があるんだが――それも後でわかると思う。「えへへ――遊園地!」 俺の質問に、桃井はハニカミながらそう答えた。 俺はそんな桃井から、咄嗟に顔を背ける。 ……やばい……ここ最近で、一番可愛い。 なんでこいつ、こんな可愛い表情が出来るの……。 俺が顔を逸らすと、桃井が面白そうに俺の顔を覗きこんできた。「……なんだよ?」 俺は桃井に自分が考えてる事がバレない様に、睨んで牽制する。「ううん、別に~」 そう言って桃井は俺の顔を覗き込むのを止めるが、なんだか楽しそうだった。 桃井が楽しんでくれるのは嬉しいが――なんだか、俺の事をからかって楽しんでいる気がしたため、それはそれで複雑な気持ちになる。 というか……まぁもう当たり前と言えば当たり前なんだが、相変わらず周りからの視線が凄い……。 もう何を言ってるのか、聞き取るのすら嫌になる……。「そう言えば、もうすぐテストだけど、海君は大丈夫なの?」 遊園地に向かっていると、そう桃井が訪ねてきた。 テストか……。 テストは学生が最も嫌う行事である。 その次が体育祭だっけ? まぁ、それは個人で意見が別れるだろうけど。 ……当然、俺にとっては両方憂鬱だ。 テストは数学以外も平均点くらいはとれるが、テスト勉強をしないためそれは絶対じゃない。 万が一赤点を取る可能性も考えられなくはないのだ。 ……だったら、テスト勉強をしろって? 嫌に決まってるだろ、そんなの……。 俺はもう自分が進む道を決めてるんだ。 今更勉強などした所で意味がない。 そして体育祭は、別に運動が嫌いなわけではない。 ただ単に、目立たない様にしながら手を抜かないといけないのが、めんどくさいだけだ。