爺さんが魔法を使って破壊した門を潜ると、森を抜け荒野を目指した。 時速40㎞程しか出してなかったが、15分程でキャンプ地へ到着。彼女が1人でポツンと待っていたが、俺のトラックを見つけて勢いよく手を振り始めた。「おおい! アナマ!」「旦那! 生きてたんですか!」「そりゃ、生きてるに決まってる。負傷者はいるが軽傷で皆は無事だ。マロウ商会の娘さんも無事だ」「良かったですねぇ」 アナマが俺にすがり、おいおいと泣き始めた。まさか泣かれるとは思ってなかったな。「あたしゃ、こうやって一緒についてきましたけど、ダメだと思ってましたよ」「はは、正直なやつだな。よし荷物を積んで皆の所へ行こうぜ。女達が飯を作っている」「女? 野盗に捕まってた女達ですか?」「そうだ」 彼女を助手席に乗せて、やって来た道を戻ると再び戦場となった古城跡に引き返す。 破壊された門を潜ると、トラックを乗り付けた。「おおい! 戻ってきたぞ!」「よくまぁ、皆無事で」 皆の無事な姿を見て、アナマが再び泣き始めた。随分と涙もろいやつだ。 まぁ、年を食うと涙腺が弱くなる。俺も、ちょっとした事で、うるうるしまうことがあるからな。「マロウ商会の娘さんもよく無事で!」「はい、ケンイチさんに助けていただきました」 俺とプリムラさん、そしてアナマで再会を喜んでいると料理をしていた女達が驚嘆の声を上げた。「ええ? もう戻ってきたんですか? さっき出たばかりでしょ?」「言っただろ。あの馬なしの車って奴は俺達獣人並に脚が速いんだよ」「へぇぇ」 側にいたニャケロが得意げに女達に説明をしているのだが――それを横目に見ながらアナマがアネモネを見つけた。「こんな子供までぇ……」 アナマがアネモネへ近づくと彼女の頭を優しく撫で始めた。「ぐすっ……あたしの子供も生きてりゃ、このぐらいの歳に……」「え? お前、子供いたのか?」「ええ――流行病で亡くしてしまいましたけどね……もう10年ぐらい経つかねぇ」 聞けば、行きずりの男との間に生まれた子供で、小さいうちに病気で死んだらしい。 この世界は医療が発達していないからなぁ。子供の生存率は高くないだろう。 アナマの相手はアネモネに任せて料理を仕上げよう。腹が減ったからな。「野菜は煮えたかい?」「まだですよ。この鍋の使いかたも解りませんし……」 量が多いので、さすがに煮えるのに時間が掛かるらしい。「爺さん、魔法で鍋をちょっと加熱出来ないか?」「そうじゃな。ワシも朝から働いて腹が減ったわい」 爺さんが何かの魔法を使うと数分で鍋がぐつぐつと沸き始めた。「さすが爺さん。よっしゃ、いい感じだ」 俺が圧力鍋の蓋を閉じると、すぐに蒸気が上がり始めた。これで、10分もすりゃ食えるようになる。