上の不安は下に伝播するからだ。「はい。先行してシバを追っていたのですが、川の氾濫に呑み込まれて…」っ!ヒルデガルドの報告に、リネーアは思わず息を呑む。顔から血の気が引いていくのが、自分でもわかった。ジークルーネは《鋼》随の猛将であり、ここぞという局面で幾度となく大将首を討ち取ってきた、いわば勝利の女神である兵士たちにとっても勇斗に次ぐ精神的支柱である。それを失ったとすれば、《鋼》の戦力減は計り知れない。リネーア自身、もう四年近く、勇斗を敬愛する同志として幾度となく語らい合ってきた仲である仏頂面の奥に、けっこうかわいらしい一面があることも知っているそんな彼女がまさか・考えるだけで恐布でカチカチと歯が鳴り膝が震えた。だが、悪い知らせというものは、得てして立て続けに届くものである「申し上げます」