あ、失言してしまったかな? 先ほどの「危ない」という単語へ、少女はぞおっと顔を青くする。そして滑り始めたそのときも、僕の腕を両手でがっしり握って離さない、だと……!? ブルーの滑り台へグイと引きずり込まれ――僕の人生において、最も恐ろしいウォータースライダーは始まった。あっと思ったときにはもう視界は真っ青な滑り台しか見えず、おまけに少女から首へ抱きつかれると……うわああ、これは怖いぞ!「うんにゃああーーーーっ!」「落ち着いて、落ち着いて、ヘッドロックはやめてっ!」 さすがにね、僕の眠そうな顔は吹き飛んだよ。 2人分の体重があるせいか、どうんどうんとカーブの度に身体は揺れ、その間もずっとマリーは悲鳴を上げている。そのまま最終カーブを越えると、迫りくる加速度へさらなる悲鳴は巻き起こる。「や、あ、あ、あ、あーーーーっ!」 うーん、なんだろうね、この長時間プロレス技を受け続けているような状況は。しゅぱりと投げ出されたと思えば、そのまま腹から落ち、パァン!良い音を立てて入水だ。 プールへ遊びに来たはずなのに、どうしてうちのエルフさんは、とんでもない変則DDTを編み出してしまうのかなぁ。 ごぼごぼ水に沈みながら、とても不思議な思いをさせられたよ。「ふう、意外に気持ちよかったわね……。あれ、一廣、どうして一緒に滑ってきたの? 私を心配して追いかけてくれたのかしら?」「……どうして一緒になったんだろうね。まずは、あそこで笑い転げてるウリドラに聞いてみたら良いんじゃないかな」 ふうん、と少女は不思議そうな顔をして、それから僕の肩へしがみついてくる。どうやらこのまま乗せてくれという事らしい。いつの間にやらマリーも、プールで楽に過ごす方法を覚えつつあるなぁ。 この後、もう一度だけウォータースライダーへ乗り、今度はウリドラが同じ目に合わされた。