「僕がついてるのにそんな事はやらせないよ。君たちはFランク冒険者だけど、Dランクの実力が有ると言っていたので、Dランク依頼を持ってきたよ。本当はFランク冒険者はDランク依頼なんて出来ないんだけど、僕が指導についてるので今回は特別なんだからね」「ふふふ、ついに私の実力に気がついたようだね。リリィ君。なんならCランク依頼を持ってきてもいいのだよ、ふふふ」 リリィさんを前にして不敵な笑みを見せる石川。 それやめとけ。 たぶん石川だったら敵のワンパンで余裕で死ぬから。 そんな自信過剰な石川にリリィさんが諭す。「そこまで自信が有るなら、いきなりCランクの依頼でもいいけどね。これから訓練始める前に少し君らの実力を見極めておこうと思ったんだ。君たちには簡単だとは思うけど、Dランクのゴブリン討伐の依頼を持って来たよ」「ふーん、私を試すと言うのね。いいわ! Dランク勇者の実力にひれ伏すがいいわ!」 何を根拠にしてるのか、無駄に自信ありげな石川の発言が怖い。「うん、期待してるよ。あと、タカヤマは怪我してるからここで待っててね」「いや、俺も行きますよ」「怪我の方はだいじょぶなの? 傷口開かない?」「だいじょぶだいじょぶ。結構治ってるから見学ぐらいなら出来るから」「そっか、じゃあついて来て」 リリィさんに連れてこられたのは街から歩いて30分程の草原の中に出来たゴブリンの巣。 まだ出来てすぐの新しい巣との事。 町のすぐ近くにこんな物が有ると、すぐに大繁殖して街を襲い始めて騒ぎになる。 本来は討伐依頼を出して即駆除の対象になるんだけど、今回は特別に俺達の訓練用に残してもらったそうだ。 まあ、巣が大きくならないように繁殖度を管理すると言う条件を付けてだがな。「じゃあ、一匹連れてくるからイシカワさん倒して!」 リリィさんはゴブリンを連れてくるといって、獣の様に背を低くして雑草茂みの中に潜り込む。 茂みに隠れながら巣に向かっていった。「ねーねー、高山。ゴブリンてなに?」「俺も詳しくは知らないんだけど、ネトゲで言うスライムやウサギの次に弱いモンスターらしいよ」「へー。私にも倒せる?」「足が遅いみたいだから距離を取りつつ攻撃すれば倒せるんじゃないかな?」 ちょっとだけ俺のゴブリン知識披露。 この程度の知識の漏洩なら真の勇者と疑われる事もあるまい。 そんな事を話してるとリリィさんがゴブリンを連れて来た。「イシカワさん、ゴブリン連れて来たよ!」 リリィさん、すごくニコニコしてる。 おまけに連れて来たゴブリン、ゴブリンなのにすげーデカい。 巨人じゃねーの? 背丈2メートル半ぐらい有るんだが? どう見ても巨人サイクロプスの亜種にしか見えない。 しかもすげーデカい棍棒持ってるし! こいつは本当にゴブリンなのか? とりあえず奴を鑑定してみた。