「ほら、日中は暖かいけど夕方は肌寒いんじゃないかな。そう考えると洋服を備えておくのも大事だと思うよ、マリーお姉さん」「あっ、そっ、そうね、ええ、確かにそうかもしれないわ……それで、もう一度お姉さんと呼んでくれないかしら?」 あれ、子猫とエルフから、じいっと見つめられているぞ。 それにしても「お姉さん」という言葉を喜ぶなんて、どういう所がツボなのか分からないものだ。しかし、ふっくらと艶のある唇から「はやく」と無言で命じられると、こちらとしても喜ばせてあげたくなる。「ええと、マリーお姉さん、どうしていつも大人っぽいのかな?」「ふふ、分かってしまうのね。いいかしら、あなたにはまだ理解できないでしょうけど、自然と全身から大人っぽさがにじみ出てしまうのよ」 うん、猫の手をぴこぴこ動かしながら説明をしてくれるけど、しっかり可愛い気配がにじみ出ているね。そのまま続けてくれて構わないよ。「ふふ、あなたも大人っぽくなりたいなら、第一に好き嫌いをしないこと。ピーマンは確かに苦いけれど、あれを我慢しないといけないわ。それとお野菜もしっかり食べること」「……それ、全部マリーのことじゃないの?」「お黙りなさい、カズヒホ。マリーお姉ちゃんの言うことを聞けないのかしら? 今日から私の分も食べて構わないわ。そうしたらあなたも大人っぽくなれるはずよ」 それは駄目です、と指でバツマークを作ると、しゅんと眉尻が落ちてしまった。 お姉ちゃん、好き嫌いはしちゃ駄目だよ?