「ありがとう。だけど、君の好きな男はこんな所で終わる……女に守られるだけの存在なのか?」「……」「俺を信じてくれ。フィーリア、君が一緒に居てくれるなら、今度こそ立ち上がれる」 手を伸ばす。 俺自身が突き落としてしまった少女へと。 自分の身すら構わずに助け出してくれた女の子に。「俺は君との明日が見たい」 これまで逃げ続けて来た。 たった一度の失敗で、全てから逃げたんだ。 そんな俺をフィーリアは癒してくれた。 一度も諦めずに信じてくれた。 悪意が追い掛けて来ても、もっと遠くへ逃げようと言ってくれた。 でも、それではダメなんだ。 魔王はこの世の果てまで追い掛けてくる。 その先には破滅しか残されていない。 俺はこの子のいる、明るい世界で生きたい。 明日に希望を抱きながら、今日を終わりたい。 どうしても世界が暗いというのなら、俺が照らす。 そう決めたんだ。「……」 よろよろと手を伸ばすかどうか躊躇っているフィーリアの手を取る。 小さくて温かい。 この小さな手に守られていたんだ。 今度こそ間違えない。「本当は喜ばなくちゃいけないんです……」 フィーリアは涙目で言う。 その表情は暗さと明るさを混在させる、不思議なモノだった。 だけど、理解は出来る。 大切な人が夢を追うが為に傷付くかもしれない。 応援しなくちゃいけないのに止めたくなる。 この子は優しいから、そう思ってくれているんだ。「でも、男が、あなたががんばれるって言える様になったのに、否定する様な女にはなりたくないんです……」 この子は本当に良い女性だ。 男の気持ち、とでも言えば良いんだろうか。 そういったモノを汲み取ってくれる。 そんな風に言ってくれる人がこの世界に一人でも残っているから、戦おうって思えるんだ。「だから……こう言わせてください」 フィーリアは何度か深呼吸をした。 そして意を決した様に口を開く。「ずっとずっと……その言葉を待っていました」 フィーリアは受け入れてくれた。 何度も失敗して、何度も間違えた俺を、今度も信じてくれた。「ありがとう。今までごめん……代わりに何か俺に出来る事があったら言ってくれ」 沢山苦労を掛けた。 そんなダメな俺をフィーリアは諦めないでくれた。 だから、今度は俺がお返しをしてあげたい。 一生を掛けてこの子の為に生きたいと、そう思った。