偶数頭戦が終わり。 同日午後、奇数頭戦が開催される。「これはこれはエセお嬢様、ご機嫌よう」「おーっほっほ! ご機嫌よう、露出狂さん。良い天気ですわね」 序列5位コスモス VS 序列6位シャンパーニ 二人は犬猿の仲であった。 コスモスは偶数頭戦の時とは打って変わって、本気の表情をしている。絶対に負けたくないという気持ちがにじみ出ていた。 もう一方、万能メイド隊十傑の一人シャンパーニは、何とも優雅な表情でコスモスを見下している。 ふわふわの金髪はエレガントなウェーブを描き、そこそこ高い身長にそこそこ大きな胸、つり目で高慢そうな表情。どこからどう見ても“お嬢様”であった。 よく見ると、メイド服もところどころにアレンジが加えられていて、煌びやかに装飾が施されている。 彼女はファッションや身嗜みに関しては決して手を抜かない。毎朝一時間以上かけて髪をセットするし、メイクも非常に丁寧で、メイド服の装飾は毎日変える。立ち居振る舞いも上品で、行動に一切の隙はなく、喋り方は常にお嬢様然としていて、「おーっほっほっほ!」と冗談みたいな笑い方をする。 そう、彼女は“お嬢様”に憧れていた。何故そんなにも憧れているのかは、メイドの誰も知らない。だが、シャンパーニがメイドでありながらお嬢様であろうと日々努力していることは、メイド全員が知っていた。 だからこそ。コスモスはシャンパーニを嫌い、シャンパーニはコスモスを嫌う。 これは、“5位と6位の対決”ではない――“下品と上品の対決”なのだ。「早く杖をお出しになったらいかが?」「パニっちこそ、さっさと黒くて長くてカッチカチのものを出したらどうですか」「……貴女、そのあだ名で呼ぶのはやめてって何度も言わなかったかしら」「えー、いいじゃないですかパニっちぃ。パニっちのパイっちもプニっちしてそうですよねー」「ムキィーッ! 今日という今日は許しませんわよ! そこに直りなさいコスモス! わたくしが粛清して差し上げます!」「うわあ。ムキィーとか口で言う人、初めて見ました……興奮しますね」 コスモスは【杖術】を使うため棒を、シャンパーニは【剣術】を使うため木剣を構える。 双方、睨み合い……そして、息を合わせたかのように同時に踏み出した。「あ、相変わらずの、ヘンタイ杖術、ですわねっ」「パニっちこそ、剣の扱い方、上手いですねえ。床上手なんじゃないですか?」「減らず口を!」「フェ○すぐしろ?」「~~っ! んもうっ!」「ほらほら怒ってばっかりじゃなくて。私がパンティを脱ぎ始める前に勝たないと大変なことになりますよー」「何を言ってるんですの!?」 執拗なセクハラ攻撃と、うねうねと変幻自在な【杖術】でシャンパーニを翻弄するコスモス。二人の対決はいつも、序盤はこうであった。 しかし、シャンパーニも負けてはいない。偶数頭戦では7位の馬丁頭ジャストから6位の座を防衛しているのだ。その実力は紛れもなく本物であった。「このっ……いい加減に、なさいっ!」「わっ、とと」 シャンパーニは《桂馬剣術》の鋭い突きを放ち、コスモスの鳩尾を狙う。コスモスは間一髪で体をひねり躱した。木剣は、コスモスの脇腹を掠める。「あ痛たた」「おーっほっほっほ! 蝶のように舞い蜂のように刺す。リリィちゃんを見て学びましたわっ」「……突くのがお好きですよね、パニっち」「ええ。今は木剣ですけれど、普段はレイピアを使っておりますのよ。おほほっ!」「じゃあ、突かれるのも好きと見ましたっ!」「――っ!」