第4話 お師匠様はめちゃくちゃ 俺は今ベイトさんと2人で平原に来ていた。なんでも早速稽古をつけて貰えるらしい。俺の装備は相変わらず安っぽい。対してベイトさんは結構良さそうな装備をしている。装備で人の強さを語るのは良くないと思うが、やはりベイトさんはかなり強いのだろう。「んじゃここら辺で始めるか」「始めるって稽古をですか?」「それしかないだろ」 そう言ってベイトさんは大きな鞄の中から木製の剣らしきものを取り出す。木製の剣は特別珍しくはない。問題はその形状だ。剣は普通なら両側に刃があるのだが、この木製の剣は刃らしきものが片側にしかついていない。異形と呼べる代物だろう。「じゃ、始めるか。まずお前に教えるのはフォルテート流という剣技だ」「フォルテート流?」「ああそうだ。フォルテートってのは俺の師匠に当たる人物でな、まあ後で詳しく教えてやる。とりあえず剣を振ってろ」 フォルテート、きっとすごい人物だったのだろう。 俺はその後ひたすら木製の剣を振らされた。緑豊かな草原で、ただひたすらに。この木製の剣は木の癖にやたら重たい。普通の鉄の剣よりもかなり重い。本当に木製なのか疑いたくなるほどに。だがベイトさんはこの木製の剣を軽々片手で振りやがる。俺もかなり筋肉がついてきたと思っていたがまだまだだと痛感した。 それから何度も同じ場所で、同じ時間、剣を振らされた。手に豆ができようとも、腕を痛めようとも。俺は強くなるために剣を振った。そして半年が過ぎた頃、俺達はまた平原に来ていた。「だいぶマシになったんじゃないか?」「そう·····なんですか? 俺としてはそこまで変わった気がしないんですが」 ただ全身の筋肉が少しついた程度にしか思えないのだが。するとベイトさんは腰に掛けていた剣を抜き、近くにあった木に目がけて技を放つ。俺は一瞬の出来事で何が起きたのか理解出来なかった。俺が木の方に目をやると、木が真っ二つに切れていた。10メートル程の木が一瞬にして切られたのだ。「え、ちょっ·····え?」「どうだ、凄いだろ? これがフォルテート流だ」「はい、凄かったです!!」「だろだろ?」 それからベイトさんは嬉しそうにフォルテート流について語ってくれた。フォルテート流は速さが命。力は二の次らしい。だからそこまでごつくなくてもいいらしい。でもベイトさんは結構ごつい気がするのだが·····。まあこの技を開発したフォルテートってひとは女らしいし、本当に力より速さなのかもしれない。 その日からベイトさんとの稽古はひたすら実践形式になった。技を教えて貰いながら魔物を倒す日々が続いた。俺は幾度と無く死にかけた。その分自分が強くなっていることを実感出来たが。 俺とベイトさんが出会って2年が経った。俺は何とかフォルテート流をマスターする事が出来た。かなりキツかったけど。そして今日がベイトさんとの別れの日だ。