そんな仕事なら、ギルドへ入らなくても日雇いやらでやりゃいいからな。「ここ、イベリスも人口に比べれば冒険者の数は少ないはずですよ」「なるほど、冒険者ってのは地方の仕事なのな。でもドラゴンとか、デカい魔物が出たらどうするんだ?」「そういう時は旦那。軍隊のお出ましさ」 ここの公爵領も王都にも、立派な騎士団が存在していて歩兵などの軍隊もいるという。「そりゃ、確かに冒険者の出番はなさそうだな。けど地方なら、子供でも薬草を摘んで小遣い稼ぎが出来るのに、ここら辺じゃそういうのも無理って事か……」「その結果が、あの貧民窟なのです」 街が大きいってのも良し悪しだな。 そんな話をしながら、この街の冒険者ギルドへやって来た。石造りの4階建ての建物、窓にはガラスが嵌っていて、玄関の作りも立派だ。 中も明るく広い、床は板張り。柱は石なのだが、壁は木の板が張ってあるようだ。 とりあえず皆を引き連れて、正面の受付へ行く事にした。赤いベストを着た女子職員が座っている。 どこのギルドもこの制服なんだな。だが、森猫に気がついた、獣人達がゾロゾロと寄ってきた。「この鑑札は――旦那がこの森猫様の主人なんで?」 サバトラの男の獣人が話しかけてきて、ベルの首に飾ってある銀の鑑札に気がついたようだ。「まぁな、森猫様を拝んでもいいぞ」 俺にそう言われて――凛と座っているベルを前に、屈強そうな男達がペコペコとお祈りをし始めた。