(……あの巫女服の者が、姉とやらか) イヴも距離を取り、姿勢を低くして身構える。(それにしても……) イヴは奇妙な感じを覚えた。 勝負を決するまであとほんの少しだった。 が、樹はあっさり刃を引いた。 引くことに対し、悔しさを微塵も滲ませず。「鹿島さんは、無事のようね」「へへ……ま、危機一髪だったけどな」 樹がレイピアを構え直す。 視線はイヴから外さず、彼女は姉に問うた。「姉貴……一応、とどめを止めた理由を聞いてもいーか?」「あれは、魔物ではないわ」「は?」「今までの魔物とは毛色が違う」「メスライオンか」「豹よ」「?」「……?」「?」「……豹よ?」「……その二つってなんか違うのか?」 姉は、回答せず薄く微笑んだだけだった。 小馬鹿にする笑みではない。 それから冷静な面持ちに戻り、姉はイヴを見据えた。「他の魔物との違いは、高い知性を持つことね。これまでの魔物とは知性の性質が違うわ。あの瞳に宿る意思と立ち振る舞いは、むしろ人間と近似していそうだけれど」 樹が濡れた髪を後ろへ撫でつける。