幸せなはずなのに少しだけMOODムードがMADマッドになってしまったので。 俺はとりあえず琴音ちゃんを送りとどけ、当然に別れのキスなどもないまま、自宅へ戻った。 すると、玄関に靴が三足ほど多い。 まさかと思い、リビングまで向かうと。「よーう、祐介」 テレビ前のソファー上でだらけてお菓子を食べていたナポリたんが挨拶をしてきた。 奥のテーブルには、真之助じいさんと友美恵ばあさんもオヤジたちと一緒に座っている。心の声だけな。 妹の佑美はまだ帰宅してないようだ。 何やら込み入った話をしていたように思える祖父祖母に軽く挨拶をし、ナポリたんのわきへと移動して、さっそく尋ねる。「どしたのナポリたん、小松川家勢ぞろいで」「ん、いや、旅行のお土産を届けに寄ったんだけど」「……ああ」 納得。 しかしさっきナポリたんが食べていたお菓子は、お土産に持ってきたものみたいだけど……セルフ消費すんな。 まあいいか。どんな味なのか興味はわくよな、熊本名物『馬刺しパイ』って。うなぎパイの仲間みたいなもんかな。 叔母と一緒にお土産を貪り食う。 なんとなくコンビーフみたいな味がするパイを堪能しつつの会話スタート。「……いろいろあったみたいだな、祐介」「ん? いきなりなにさ」「さっきチラッと話が出てたぞ」「なるほど……まあね」 馬刺しパイを二枚消費してから、意を決して提案。「……ところでナポリたん、報告があるんだけど。ここじゃなんだから、俺の部屋に来ない?」 ナポリたんは理由も聞かずに頷いてくれた。