エレナはベッドで眠る蓮司を睨にらむ。 もともとエレナは蓮司のことをあまり好いていない。第一印象は最悪だった。見た目は子供なのに、中身は傲ごう慢まんで鼻持ちならない冒ぼう険けん者しやそのもの。初対面の時からシルヴィやエステルに対する言こと葉ば遣づかいもまったくなっていなかった。だが、それでもその態度を裏付けるだけの実力はあると認めてもいたのだ。いた、のだが……。「そういえば食事の話だったな。食欲はないが、スープを持ってきてくれないか」 苦虫を噛み潰つぶしたようなエレナを見かねたのか、シルヴィが溜息交じりに話を変える。理由をつけてエレナをいったん退室させることにした。のだが――、「ん……」 突とつ然ぜん、蓮司が呻うめき声ごえを漏らし、身体がびくりと震ふるえる。「レンジ?」「んぅ」 蓮司はシルヴィに声をかけられ、薄うつすらと目を開けた。「ようやく起きたか」 シルヴィはフッと口許をほころばせる。「シル、ヴィ……? …………くっ!」 ぼうっとしていた蓮司だったが、意識を失う前の出来事を思い出したのか、勢いよくベッドから身を起こした。と、同時に利きき手てに神装を出現させて握り締しめる。「お、おい! レンジ! 落ち着け! おい!」 シルヴィは慌あわてて蓮司を静めた。「………………ここは?」 蓮司はびくびくと周囲を見回し、シルヴィに尋たずねる。「ルビア王国城の客室だ。武器を……お前の神装をしまえ」 と、シルヴィは嘆たん息そくして告げる。「……」 蓮司は黙だまって神装のハルバードを消しよう滅めつさせた。「寝ね起おきからそれだけ動けるのなら体調に問題はなさそうだな。切り飛ばされた手足も綺き麗れいに復元されているし」 シルヴィはやれやれと肩をすくめて言う。 一方で、エレナは不ふ機き嫌げんそうに蓮司を見つめている。「…………何があった?」