「お別れの挨拶に来ました。ヒューゲルさんとエイシャさん」 俺はというと配達所に立ち寄った足で、そのままヒューゲルの家へとやってきていた。 彼らにも、この街で大変お世話になった。 俺が冒険者に戻ろうと思えたのも二人のお陰だ。 冒険者に戻るにあたって、ブランクを埋めるための修業にも付き合ってくれた。 ヒューゲルとエイシャに出会わなければ、俺はもう一度ダンジョン攻略を目指すことはなかったかもしれない。 そのくらい、二人には感謝していた。「もうこの街を出るのか」「早いですね。出会ったのが昨日のことのように思えますよ」 しかも、エイシャには一つ『到達する者アライバーズ』復活のために頼みごとをしていた。 情報収集を専門とする彼女にしか任せられない頼みごとだ。「それでどうでした? あの件」「いきなりでしたからね。調べきれないところもありましたが――」 そう断って、エイシャは一枚の紙を手渡してきた。「はい。これが『到達する者アライバーズ』の皆さんの現在の動向をまとめたものです」「わざわざ忙しいところありがとうございます」 書かれた内容に目を通しながら、感謝の言葉を述べる。「気にしなくていいですよ。今はちょうど依頼もなかったですから」「ああ、それと――」と言って、エイシャは付け加えた。「わからない点もいくつかありましたから」 紙に書かれた項目を指差しながら、いくつか丁寧に説明してくれた。 エイシャは謙遜していたが、彼女の情報収集能力はずば抜けている。 一週間前に頼んだのに、ここまで調べてくれるなんて。 一体、どうやって彼女は情報を得ているのだろう。 知りたいような。怖いから知りたくないような。「それにしても、みんなバラバラの場所にいるな……」「集まるのが大変そうですね」「まあ、エイシャさんに調べてもらった分、手がかりはありますし。ここからは地道に探しますよ」 エイシャの言う通り、気になる点もいくつかある。 全員を簡単に見つけることはできないかもしれないが、なんの手がかりもなしで一人探すよりはずっと現実的だ。『到達する者アライバーズ』のみんなで集まる時間も、そう遠くない未来かもしれない。「悪いな。私は何もできなくて」「ヒューゲルさんの専門分野とは違いますし……」 ヒューゲルの手を借りるような事態は、できれば起こって欲しくないのが本音だ。 殺しの依頼を頼むような事態って、一体どうなれば起こるのだろう。「たまには王都に顔を出してくださいよ」「そうですね。ダンジョン攻略が一段落着いたら顔を出せるように頑張ってみます」