そんな彼は長きにわたって、とある願いを抱いていた。いや、正しくは抱いている、だ。それは過去の話ではないのだから。今世になっても変わらぬ深い願い。明るく賑やかなその身の奥底に眠る、驚くほど重たい暗い影。「須磨さん………お願いがあります」ある日、彼女は静かにそう切り出した。いつも賑やかな彼女は、その日異様な程の静けさを纏っていたのをよく覚えている。「宇髄さんから、離れようと思うんです」揺るがぬ視線と共に発された言葉に、「どうして」と震える口を開く。彼女は困ったように眉を下げお腹を撫でながら「子供ができたんです」と笑って返した。ぽつりと呟くようなその答えに納得してしまった。だって、きっと自分だけが知っていたのだ。前世、彼は男の身であったからこそ、逃げ切らなかったのだと。しかし、何の因果か今世で彼女は女としての生を受けた。であれば、このような結末が待ち受けていてもなんらおかしくはないのだ。