ハンドルを握り、夜の道路を走っていると周囲の静けさに気づいた。 横を見るとマリーはスヤスヤと寝入っており、頭にはお土産の耳つき髪飾りを乗せている。振り向けばウリドラも後部座席で瞳を閉じていて、揃いの髪飾りは姉妹のような可愛らしさを覚える。 よほど遊び疲れたのか、赤信号のあいだ少女へ膝掛けを乗せても、むにゃりと眠そうな声を漏らすきりだった。 車の窓はもう真っ暗で、遅めの時間ということもあり道はだいぶ空いている。青信号となり、ひとつ、ふたつと交差点を越えたころ、ひとりごとを漏らしてしまった。「……さて、あとは彼をどうするか」「ザリーシュ、様、のこと?」 後部座席から声をかけられ、少々ギクリとさせられる。てっきり眠っていると思ったけれど、ダークエルフであり忍ぶ者なのだから仕方ないかと思い直す。「あれ、起きてたのかい。さすがは忍者だ」 バックミラー越しに彼女と目を合わせる。イブはゆっくり身を起こし、それから運転席の椅子をかかえるようにして顔を寄せてくる。「それで、どうするつもりなわけ?」「ああ……」 ちらりと背後を見ると、まだウリドラは眠っているようだ。彼女の場合、本当に寝ているかどうかは分からない。まあ、分からないのだから考えても仕方ないか、と諦める。 ゆるゆると車は速度を下げ、小さな公園の前で停車した。「ここは……?」「公園。一緒に甘い飲み物でもどうだい」 そう尋ねると、迷う素振りをしつつもイブはこくりと頷いた。