「吉祥院さん…?」
「いえ、これはその、ロシアンティーのジャムの代わりに…」
「うん、そっかそっか。でもどうする?紅茶、新しいのに替えよっか?」
若葉ちゃんの優しさがつらい…。
「食べ物で遊ぶなよなぁ、コロネ。それ、最後まで責任持って食べろよ」
「…はい」
私は得体のしれない味に変わった紅茶と、底にこびりつく物体を口の中に流し込んで、なんとか証拠を隠滅した。ふうっ、失敗失敗。たまにはこんなこともあるよね。だったら他には…。
「そうだ。ねぇ、隠し味でカレーに入れたらどうかしら?コクが出ると思うの」
「却下」
「溶かしてパンケーキに添えるとか…」
「却下」
「じゃあ煮物に…」
「却下!」
私のアイデアは悉く寛太君に一刀両断された。ちぇ~っ、せっかく協力してあげようと思ったのになぁ。
「口直しに杏仁豆腐でも作るか」
寛太君が立ち上がったので、私もレシピを教えてもらいがてらお手伝いを買って出る。材料は寒天に牛乳にお砂糖っと…。
「あ、お砂糖代わりにターキッシュディ…」
「却下!却下!却下ー!」
そんな冷たい目で見ないで、寛太君。もう言わないから。
寛太師匠に「だからすり切り一杯はちゃんとすり切れ!」と怒られながらも作った杏仁豆腐は、とてもおいしゅうございました。