こないだのインタビューで少しは反省したらしい斎藤さんが、そう言ってぽんぽんと俺の肩を叩いた。「このお礼は、23日の夕食で」と三好が言った。「明後日かー、そっちも楽しみにしてます。んじゃねー」「失礼します」タクシーの後部座席にささっと乗り込んだ二人が、リアガラスの向こうから手を振った。「それじゃあ、私も一旦帰ります」鳴瀬さんは、翻訳の英訳をほぼ終えていた。今時はAIのバックアップがあるから、なかなか効率よく訳せるのだが、ゴーグル社の翻訳AIは時々肯定と否定をひっくり返したりするので気が抜けない。「お疲れ様でした。23日は?」「あー、残念ながら、その日は先約が。よく分からないんですが、家族会議があるとかで、実家に戻らないといけないんです」家族会議って、翠さんの会社のうちとの提携ネタじゃないだろうな。「それでは仕方ありませんね。それではまた明日」「はい、失礼します」鳴瀬さんを乗せたタクシーが、先の角を曲がって見えなくなるまで、俺達は門のところに立っていた。「先輩。弄りましたね?」「あ、わかったか? まあ、弟子二人へのクリスマスプレゼントみたいなものだから」二人の希望を聞いた俺は、ステータスをそれにあわせて修正した。「どれくらい弄ったんです?」「まあ希望に合わせて、こんな感じ」-------- Name 御劔 遥 SP 0.36 HP 48.50 MP 71.90 STR (-) 10 (+) VIT (-) 25 (+) INT (-) 34 (+) AGI (-) 35 (+) DEX (-) 70 (+) LUC (-) 20 (+)---------------- Name 斎藤 涼子 SP 0.23 HP 34.90 MP 60.50 STR (-) 10 (+) VIT (-) 16 (+) INT (-) 30 (+) AGI (-) 25 (+) DEX (-) 50 (+) LUC (-) 12 (+)--------事務所に戻ってから俺が書き出したパラメータを見た三好は、呆れるのを通り越して頭を抱えていた。「どうした?」「先輩、やり過ぎですって。こないだ3年間でトップエクスプローラーがどの程度のステータスになるのかを検証したじゃないですか?」そうだった。大体SP180~200くらいがトップエンドなのではないかと予測したんだっけ。だから、平均的なステータスだと、30~40くらい。少々ステータスに偏りがあっても、最大値は50~60くらいじゃないかって結論に到ったんだ。「御劔さんのDEXなんて、ブッチギリで世界チャンピオンですよ! あ、先輩を除いてですけど」「ま、まあ、かなり高めだけどさ。それでも偏ってる人ならこれくらいは……」「先輩」「はい」「SPの半分は、SPのままかもしれないって、こないだ判明したんですよ?」「げっ」そうだった。よく考えてみれば、想定したのは取得SPからの逆算だ。つまりステータスは――「予想の半分ってことか?!」「正解です」それって、最大値でも30くらいってことか?いや、ちょっと待て。トップエンドが200のSPを稼いでいたとして、実際にステータスに反映されているのが100だとすると――