蚊の鳴くような声で、クソデクがドアの向こうから俺を呼んだ。事前に来訪のメッセージも無かったので、自分のイヤホンから流れるインストバンドの音量のせいにして無視したって良かった。しかしじとりとドアを睨みつけてみても諦めるような動きがないので、暫くしてからため息を吐きながら重い腰を上げる。がちゃり、内鍵を外して薄くドアを開けると、廊下の景色と……、センスのかけらも無いTシャツ、それからもさもさした見慣れた緑髪があった。「……ごめん、連絡もなしに」「ンだよ。急用なら端的に言え」「いや、用ってほどじゃないんだけどーー」ウゼェくらいにモジモジとしてやがるのを睨んでやったが、そのくせ退散する素振りはないので舌打ちする。こいつが繊細だったことなんてひとつもない。いつも神経図太くて、目的の為なら手段を選ばないクソナー……、