ひとつ、ふたつとマリーは光の精霊へと触れ、粒子を撒いて消えてゆく。 最後の光は明るさを落とし、そして部屋は眠りに適した光量へと変わる。 カバンを床へ置き、杖をたてかけ、そして少女はこちらを見る。 襟にあるボタンを外すとなだらかな鎖骨が見え、毛布に包まれた僕へと歩み寄る。ふさりと白く綺麗な髪をかきあげ、そして伸ばした腕のなかへともぐりこんで来た。「んー、あったかい……。もうすこしそっち、ずれてくれるかしら」 もぞりと少女は身を寄せ、毛布のなかでは脚がのしりと乗ってくる。そしてもう一人を見上げようとすると、マリーの手が僕の瞳を覆い隠す。どうやら鎧を脱ぎつつあるらしく、そちらを見てはいけないらしい。 しばらくすると反対側へ腰を降ろす気配が伝わってきた。 ごそりと隣へもぐりこみ、ぐいぐいと腰を押し付けてからようやく体勢に満足したらしい。ふう、という吐息が首筋に当たりくすぐったい。 ようやく少女からの覆いは外されて、薄暗い室内の様子が視界に入る。「おっと、忘れておった」 などと言い、ウリドラは綺麗な背中、そして脇の下から膨らみを零しつつ身を起こす。急いで目をつむったが、しばらく忘れられなさそうだ。 魔具を通じて僕らは位置を特定されている。きっといま、彼女はこれを操作しているのだろう。「待たせたのう。んん、相変わらずぬくいのう。まったく、わしを寝かしつけるとは変わった小僧じゃ」 返事をしようと思ったが、首筋へとマリーはもぐりこんできてしまう。毛布のなかウリドラと瞳を交わし「どうぞ」と示すと彼女も遠慮なく抱きついてきた。 ぬくぬくに温められた毛布には、彼女らの実に眠気をさそう体温が溢れている。 くありとあくびを漏らすと、僕らは古代迷宮から消え去った。 おやすみなさい、2人とも。 明日の仕事を終えれば大型連休ですよ。