『おはようございます』 テレビでは平日の朝の顔と言えばこの人と言われるほど名の知られた司会者がアシスタントとしてタイプの違う美人女子アナを左右に伴い、両手に花の状態で今朝何度目かの挨拶を笑顔で繰り返していた。 私はいつもと違って静かなダイニングから、リビングに置かれたテレビを一人で見ながら朝食をとっていた。普段であれば子供たちの賑やか……いや、騒がしいほどの明るい声に囲まれているだけに、こうしてテレビの音だけが聞こえる静かな中で一人食事をとったという記憶は結婚して最初の子供が産まれて以降なかった。 それだけにこの静けさにはあまり慣れておらず、いつもと同じように妻が用意してくれた朝食だと言うのにあまり食欲がわかない。我ながら情けないものだなと思うのだが……。