「マジかよ」「それじゃ、俺はこの斧をもらうぜ」 鉄無垢のバトルアックスなので結構な重量があるのだが、男は片手で楽々と振り回している。 こんなの食らったら真っ二つだな――剣呑剣呑。「おっしゃ! この話、乗ったぜ! そろそろ、デカイ稼ぎをしようと思ってたところだしよ」 リーダーのニャケロの話に他の2人も頷く。勿論、ミャレーも話に乗るようだ。「そうか、やってくれるか」「おう!」 3人の獣人が剣と斧を掲げてクロスさせ気勢を上げる。 これで俺を入れて5人か……。「それでは私も参加させていただくかな」 やってきたのは俺の店のお得意様――騎士爵様だ。「おお! 騎士爵様が一緒に行ってくれるとは、これは心強い」「貴公も、やむを得ず魔法を見せてしまったのだろうが、このような物まで出せるとは……」「もう、ヤケクソですよ」「それより、我がウルフファングが完成したぞ?」 騎士爵様が銀色に光る刃渡り1m程の大剣を掲げる。おそらく俺が提供した鋼材――A○S-34で打たれた剣だろう。「ウルフファングとは……?」「当然、この剣の名前だ。しかし鍛冶屋の親父も、この鋼材の扱いには相当苦労したらしく泣いていたぞ」 なんだか、うっとりとした表情で剣を眺める彼だが、この人もちょっと変わった人だったようだ。「なにせ普通の鋼鉄とは違いますからね」「うむ。シャガ狩りとは我がウルフファングの初陣に相応しい。たっぷりと悪人どもの血を吸わせてやることにしよう」「よろしくお願いします」 さて、これで6人か。確かに騎士爵様が合流してくれたのは、こころ強い。何があっても彼が証人になってくれる。 この世界で公人が一緒にいるというのは、色々と捗るのだ。 だが――まだまだ戦力が足りないな。「ほほ、中々面白そうな事をしようとしているな。命知らずも良いところじゃ」 暗い緑色のローブを来た白髭の爺さんが、そこにいた。俺がいつもアイテムを買っている道具屋の爺さんだ。「まさか爺さんも、やろうってんじゃないだろうな。年寄りの冷水だぞ?」「何を言うか。これでも元冒険者じゃぞ? ほれ」 爺さんが下から上へと手を動かすと、地面に小さい火柱が立ち、地面を焦がす。「おお! 爺さん、やっぱり魔導師だったのか?」「すでに引退した身じゃが。最後に一花咲かせるのも悪くないじゃろ。それに、お前さんが使っている魔法にも興味があるしな」「魔導師がいれば、戦力としてかなり強化されるな」 前衛を獣人達に任せれば、後衛から強力な魔法が使える。RPGのセオリーだ。「ほほ、そういう事じゃ」 これで、7人……。 だが、もう一人男が歩み出た。そいつは俺が家までベッドを運んでやったマッチョな男だ。「あんたか……あんたも元冒険者とかなのか?」「一応登録はしてあるぜ。黒狼狩りに参加した事もあるしな」「でも、あんたは新婚だろ?」「ああ、そうなんだが――実は旦那の店で色々買い込んだら、女房から怒られちまってな」「金を使いすぎたか?」「生活するならボロで十分、新品なんて要らないのに――って言われちまって」「なんだそれ、滅茶苦茶良い女房じゃないか」 ノロケか? ノロケなのか?