下に降りてから数分でポッカリと空いた広い空間に出る――まるで大広間のような場所だ。 上を見れば5m以上の高さがあるようだが、暗い中なので正確な高さは不明。 天井の一部に穴が開いていて、上に繋がっているように見えるが、ここからでは確認出来ない。 アイテムBOXからレーザー距離計を出して天井の高さを計ってみる――7mらしい。 真っ暗なので、イマイチ状況が掴めない……頭についているライトでは照射範囲が狭すぎるのだ。 広間の中心近くまで行くと――俺はシャングリ・ラから、LED投光機を購入した。50wで防水仕様らしい。 ついでに、モバイルバッテリーもアイテムBOXから取り出して、投光機を接続。 暗い洞窟内に、直視出来ないような明るさの真っ直ぐな光の筋が伸び辺りを照らす。暗い海の闇を裂く灯台のように――。「あそこにいるぞ!」 広間の端――俺達が殺虫剤を掛けた洞窟蜘蛛が瀕死になり、巨大な岩の前で懸命に身体中を脚で擦り、変則的な動きを繰り返している。 それは殺虫剤を掛けた虫が、でたらめな動きをするのに似ていて最後の断末魔なのだろう。「トドメを刺すか?」「おう!」 その大蜘蛛に近づこうとした瞬間、奥にあった巨大な岩が動いた。「おわっ! なんだこりゃ?!」「旦那! これって!」「ふぎゃー!」「あー!」 投光機の白い光に照らし出されたのは巨大な白い蜘蛛。俺たちが戦っていた蜘蛛より倍以上デカい。 小さい方と明確に違うのは目が赤いところか。そのデカくて赤い目が俺たちに狙いを定めているように見える。「旦那! こりゃ、メスだ!」 ニャメナが叫んだ。「メス? メスの方がデカいのか? それに、あんなデカさじゃ通路を通れないぞ?」「だから、オスが狩りをして、メスを食わせていたんだよ」 それじゃ、そのオスを瀕死にしてしまったら、あのメスはここで餓死するしかないって事か。 小さい時に、この洞窟へ入り込み、オスに食わせてもらってここまで大型化したのか。「おい! 逃げるぞ! 餌を運んでいるオスが死んだら、あのメスは直ぐに死ぬだろ」「そりゃそうだ!」「にゃー!」 俺達が踵を返そうとした刹那――巨大なメス蜘蛛は、瀕死に喘いでいたオス蜘蛛を長い脚で弾き飛ばすと、俺達の後方へ回り込んだ。