「おおっ、出来るのか」「そりゃ旦那。あれは敵の背後を取る基本技だよ」 いつの間にか、俺の横にニャメナが立っていた。なるほどなぁ――敵の頭上を飛び越して背後を取るのか。 今日は、プリムラの店の休息日らしい。支店長のアイリスがやって来て、プリムラと一緒に帳簿の整理をしている。 それじゃ全然、休息日になっていないような気もするんだが、2~3時間で終わるので、その後は休みとなるようだ。 料理の仕込みのために街で借りている調理場でも、清掃などが行われているという。「アイリスは帰ったのか?」「ああ、俺が背負って街道まで行ってきた」 ニャメナも、ステージの上に登りたいのか、そわそわしている。「昼飯でも食っていけばいいのに……」「たまの休みは家族と食事をしないと、親父さんがうるさいんだと」 それなら、「早く嫁にいけ」――とか言わなきゃいいのに。「アネモネは?」「アネ嬢は家で本を読んでいるよ」 俺達もアルミ脚立をアイテムBOXから出して、ステージの上に登る。 見下ろすと結構な高さがある。平屋建ての屋根の天辺に登った感じに近いかな。 今のところ、ステージは只の板。このままでは端から落ちてしまうし危険だ。柵を設置する必要があるだろう。「それにしても、旦那」「なんだ?」「崖の所にあるような、鉄の管で足場を作って、その上に家を載せればもっと簡単だったんじゃね?」「そりゃそうだが……森の中に鉄は合わないだろ。せっかく木の上に作るんだから、木で作らないと」「そういうもんかねぇ」 とりあえず小屋を載せてみるか……ミャレーとニャメナに注意を促す。ベルにも端に寄ってもらう。「よし、この上に小屋を載せてみるから、注意してくれよ。崩れそうになったり、危なくなったら逃げろよ」「にゃ!」「大丈夫だろ?」 まぁ、獣人やベルは平気だろうな。一番危ないのは俺なんだが……だが落ちるとすれば真ん中辺りだろうな。 崩落してもステージの4辺は残ると思われる。