(ずっと過去を見つめて生きてきた。復讐を果たすためなら明日あしたがなくてもいい。そう思って突き進んできた。けど……) 明日はあるのだ。 リオの帰りを待ってくれる人達がいる。 岩の家にいる美み春はるにラティーファ、サラにオーフィアとアルマ、そしてロダニアにいるセリアとアイシア。彼かの女じよ達たちと一緒に明日を迎むかえたいと思う自分がいる。(……不思議だな) 不快感は残っているが、気持ちは穏おだやかだ。 理由は考えるまでもない。(帰る場所があるから、か……) 正直なところ、利己的な欲求に突き動うごかされて生きてきた自分なんかが帰っていいのだろうか? 都合が良すぎるのではないか? という思いはある。だが――、(利己的でもいい。帰るんだ) 帰って残りの人生を平へい穏おんに生きる。 大切な人達の平穏を守るために生きる。 そうすることでルシウスへの復讐も真に達成されるのだと思う。(もう失いたくないんだ。だから、これからは守るために生きよう。みんなに幸せになってほしい。そのために俺おれは剣を握にぎる。みんなのもとに帰る) この世界には理り不ふ尽じんなことが溢あふれているから、守る力は必要だ。ルシウスを殺した今、リオはそんなふうに思っていた。 すると、岩の家の玄げん関かんがギイッと音を立てて開く。リオが扉へ視線を向ける。そこにはそっと顔を出す少女が二人いた。クリスティーナとフローラである。「お二人ともおはようございます」 リオは剣を振るうのを止めて姉妹に挨あい拶さつした。が――、「………………」 二人とも目を丸くして立ち止まっている。「どうかされましたか?」 リオは不思議そうに首を傾かしげて訊きく。「あ、いえ。髪かみの色が黒になっているので……」