「これしかないけど、これで良いか? 以前、獣人達に飲ませた時は好評だったぞ」「うひょ~、ちゃんと酒があるじゃねぇか」「ちょいと、旦那~」 アナマが呆れているが、戦勝祝だ。酒ぐらいは良いだろう。元々の軍資金はマロウさんから、もらったものだしな。「まぁ、いいじゃないか。そいつも大金が入って、女房と良い暮らしが出来るんだ。酒ぐらいは飲みたくなるだろう」「へへへ! 旦那のお陰でさ」 出発する前に変なフラグを立てまくりだったのだが、何事も無くて良かったな。「お! こりゃ、美味いぞ」「ああ、どんな酒かと思ったら、街の飲み屋の酒より上等じゃねぇか」 ペットボトルの焼酎を飲んだ冒険者達は上機嫌だ。「私は――前に貴公から、いただいたのと同じ物を所望して良いか?」「はいはい、これで御座いますね」 騎士爵用にシングルモルトウイスキーを購入した。前はスクリューキャップを交換したり、ラベルを剥がしたりしたのだが、もうそのままだ。「うむ、これだ」 カップにウイスキーを入れた騎士爵様は満足そうに飲んでいるのだが、水で割ったりはしないようだ。 まぁ、この世界の生水はちょっと信用出来ないってところもあるから、そのせいもあるもかもしれない。 水石を使って浄化すれば大丈夫なのだが、そういう習慣自体が無いのかも……。「騎士爵様、このような回り道をして申し訳ございませんねぇ」「なんの、これも民のため。女子供が困っているのだ見捨てるわけにはいかぬ」 みんなで集まって飯を食ってるのだが、すでに何人かカップルが出来ている。 荷台の上で意気投合したらしい。そりゃ、街へ帰れば大金持ちだからな。女から見れば優良物件なのかもしれない。 男に酷い目に遭わされたのに、男を頼らないと暮らしていくための選択肢が少ないという、この世界の事情が複雑に絡んでいる。「女達とアネモネは果実の汁でも飲むか?」 シャングリ・ラから、みかんジュースを購入して、カップに注いでやる。「美味しい!」 珍しく、アネモネが声を上げた。「甘酸っぱくて美味しいねぇ。まるで貴族様の飲み物だよ。まぁ、男共が酒を飲んでいるなら、あたし等も飲んで良いよねぇ」 アネモネの隣にいるアナマも、みかんジュースを美味しそうに飲んでいる。 その後、男達は暗い中でどんちゃん騒ぎを始めたので、少し離れた所で火を焚き、俺と女達は寝ることにした。 付き合ってられん。